ファシリテーションを通じてノウハウを一冊の小冊子に!

それぞれのノウハウや知見をつなぎ、事業を動かす大きな力に

どんな組織においてもノウハウや知見が点在してしまっていることはよくある話です。特に中小企業では、それらを集約して共有する仕組みが構築されていない傾向にあります。例えば、営業1課は顧客のクセをつかんで効果的な営業活動を行い成績は右肩上がり。しかし、隣の営業2課はその手法を知らずに一向に営業成績が上がっていない。これに似たようなことが、中小企業を中心に多くの企業で起きています。もし、それぞれが持つ「点(暗黙知)」(ノウハウや知見)を「線」でつなぐことができれば、「面(形式知)」となり事業を動かす大きな力となります。このことを成し遂げられるのが、ファシリテーションなのです。

顧客支援に活用するために小冊子を作ったIT企業の事例

中小企業・個人事業主へのマーケティング支援を行うIT企業がありました。大阪を拠点に活動するこの企業は、ファシリテーションを通してこれまで培ってきたノウハウや成功事例を集約して、一冊の小冊子を作るプロジェクトを立ち上がることに。社長以下、現場の社員も参加する一大プロジェクトです。私はファシリテーター兼制作ディレクターとして参加しました。まず、最初の会議では「ブレスト」を行いました。ブレストとは、ブレインストーミングの略称で、従来の方法や考え方、先入観にとらわれず、自由なディスカッションを通じて新たなアイディアや解決策を引き出そうとする手法のことをいいます。このポイントは、出された意見に対して決して批判をしないこと。

とはいえ、組織に縦の上下関係は付き物です。若手社員が、社長や上司、先輩に対して、堂々と意見を言うのは気を遣ってなかなかできるものではありません。そこで、会議の冒頭、すべての参加者に「ニックネーム」を付けることになりました。会議中は、「ニックネーム」以外で呼び合うのは禁止。もちろん役職で呼ぶのもご法度です。たかが呼び名ですが、されど呼び名です。それだけでも上下の緊張関係はかなり和らぎます。話が逸れそうになったり、論点がずれる発言が出たりした際は、ファシリテーターがしっかりとつっこみます。それは、相手が社長でも取締役でも関係ありません。その組織に属さない第三者の立場だからこそ、できることだといえるでしょう。私がいたリクルートでは、社長も「さんづけ」で呼ぶことは有名ですが、これもこの効果を狙ったものだと今では理解できます。

そして、何度かの会議を経て、小冊子は完成しました。制作業務もワンストップで請け負えることは前のコラムで述べた通りです。現場の社員が蓄積したノウハウや知見が論理的に文章にまとめられた小冊子は、その後の顧客支援に生かされています。

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