地域イベントを成功させたファシリテーション活用事例

限られた予算で大規模野外イベントを成功させるために考えた手は

これまでもお伝えしてきた通り、ファシリテーションはプロジェクトメンバーのベクトルを合わせ、目標に向けた推進力を最大限に高めることができます。それは、一般的なビジネスシーンだけに限りません。

今回は、地域振興のためのイベントにファシリテーションを活用した事例をご紹介します。福井県鯖江市にある王山古墳群。そこは、大小52もの古墳が集まる公園です。環境整備が行われ、大々的なお披露目イベントが開催されることになりました。「古墳の上で歴史劇をしたい」。主催の行政様からはこのような壮大なイメージがありましたが、当然予算に限りがあります。野外イベントをしかも古墳の上で開催するには正直かなり厳しい予算でした。「普通」のケースでは、「その予算では不可能です」と言われてしまうこともあるかもしれません。そこで私が企画したのが、アマチュアとプロがコラボレーションしたミュージカル劇。すべてをプロでまかなおうと思えば、絶対に予算が足りません。しかし、アマチュアに参加してもらえれば、かかるコストをかなり抑えることができます。また、このイベントは地域の方々に地元の良さを知ってもらい郷土愛を育むという「地域振興」の目的がありましたから、市民参加は理にかなっている。そこで地元のアマチュア劇団や高校の演劇部員に参加を呼び掛けていただきました。ここで誰もが気になるのが、劇そのもののクオリティー。当然、プロだけの集団にはかなわないかもしれません。


福井県鯖江市イベント サバイ国の栄光

目標は、あくまで「地域振興」。ファシリテーションがイベント成功に導く

ただ、ファシリテーション的に考えてみましょう。レベルの高い劇を上演することが今回の目標なのでしょうか?違います。目標は、あくまで「地域振興」です。劇は、そのツールでしかありません。最終ゴールをしっかりと見据えることで、限られた予算の中でも選択肢が広がり、不可能を可能にすることができるのです。アマチュアとプロとではスキルや経験が異なりますので、下手をすれば、「アマチュアなんかとやってられるか!」「プロの人たちは私たちの気持ちをわかってくれない!」といった不満や反発を生んでしまい、一筋縄でいかないことも出てきます。立場の違いも理解した上で、モチベーションが上がるような適切な言葉を双方にかけてディレクションすることが成否のポイントとなります。このような「調整」も、ファシリテーションを実現する要素として欠かせません。

結果、地元の人たちが主体的に参加したことで、「自分たちのまちのイベント」という意識が強まり、このイベント「サバイ国の栄光」は大成功のうちに幕を閉じました。「古代鯖江に誘う」。これは、そのときの新聞の見出しです。歴史を感じさせる古代の雰囲気を見事に再現し、メディアからも注目を集めることができ、翌年もパート2を上演することができたのです。


古墳の上で行うというかつてない野外イベント 

地元のアマチュア劇団が大奮闘

プロとアマチュアが一体となったフィナーレ

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