採用される企画書は、与件の完璧理解から

与件理解が企画書の採用可否を左右するイメージ

企画書は、自分の考えを伝えるためだけのものではない

ビジネスの現場では、よいアイデアがあっても、それだけではなかなか前に進みません。経営者や上司、取引先、関係者に説明し、必要な協力を得て、費用や人員を動かす必要があります。

その時に必要になるのが企画書です。ただし、企画書は自分の考えをきれいに伝えるためだけの資料ではありません。相手が「それなら進めてよい」と判断できる状態を作るための資料です。

言い換えると、採用される企画書は、自分の思いを押し出す資料ではなく、相手の期待に応える資料です。ここを間違えると、見た目が整っていても、相手には届きません。

最初に大切なのは、与件を完璧に理解すること

企画書づくりで最も大切なのは、与えられたお題を完璧に理解することです。つまり、相手が本当に求めていることは何か、何に困っているのか、どこまでを期待しているのかを明確にすることです。

ここがずれたまま企画を考えると、どれだけ斬新なアイデアでも採用されにくくなります。相手が求めていない解決策を一生懸命提案しても、「面白いけれど、今ほしいものではない」と受け止められてしまうからです。

競合プレゼンの場合は、与件を満たすだけでは足りないこともあります。相手が「そうそう、それが言いたかった」と感じる理解に加え、よい意味で期待を少し超える付加価値が必要になります。ただし、それは独りよがりのサプライズではなく、与件を深く読んだからこそ出せる一歩先の提案であるべきです。

採用される企画書 5つのポイント

採用される企画書には、少なくとも次の5つの視点が必要です。

  • ① 与件を完璧に理解する:相手のお題、目的、困りごと、期待を正しく読み取る。競合がある場合は、そこに+αの付加価値を加える。
  • ② 論理的に説明する:相手が「そうそう」と感じる順番で構成する。作者の思い込みになっていないか、データの出典やサンプル数に問題がないかも確認する。
  • ③ 相手の状況を理解する:正しい企画が必ず通るとは限らない。相手の好み、意思決定の癖、社内事情、実行負荷も踏まえる。
  • ④ 実現可能である:予算、時間、人員、体制の面で本当に実行できるかを示す。どれだけよい企画でも、実現不可能なら採用されにくい。
  • ⑤ 審査員にわかりやすいデザインにする:書類審査なのか、プレゼンテーションなのかによって見せ方を変える。第一印象、1ページ1テーマ、読みやすさを意識する。

この5つのうち、特に出発点になるのが与件理解です。ここが間違っていれば、後の論理構成やデザインをどれだけ整えても、企画書全体が違う方向に進んでしまいます。

採用される企画書に必要な5つのポイントを示す図

「論理的」とは、相手に疑問を抱かせないこと

企画書でいう論理性は、難しい理屈を並べることではありません。相手が読みながら「そうそう」「それなら分かる」と進める構成になっていることです。

実際の企画書は、論文ではありません。相手の理解に合わせた、紙芝居のようなストーリーが必要です。背景があり、課題があり、目的があり、解決策があり、実行方法があり、予算とスケジュールがある。その順番が自然であれば、相手は余計な疑問を持たずに読み進められます。

逆に、書き手の思い込みが強すぎる資料は危険です。自分では論理的だと思っていても、相手から見ると「なぜそう言えるのか」「本当に必要なのか」「誰がやるのか」が分からないことがあります。企画書は、相手の頭の中にある疑問を先回りして消していく資料でもあります。

企画書の構成は、最初は手書きで考える

企画書を作る時、いきなりパワーポイントなどのアプリを開く人は少なくありません。しかし、最初からデザイン画面に入ると、見た目を整える作業に意識が向き、肝心の構成が弱くなりがちです。また、自分ができるデザインしかできません。

まずは、手書きで考えることが重要です。与件を整理し、目的を決め、相手が判断するために必要な材料を並べます。手書きだと自分が作りたいデザインイメージも自由に作れます。

構成が見えれば、あとは作業です。逆に、構成が見えないまま作り始めると、何度も作り直すことになります。

たとえば、採用される企画書は次のようなページ構成で考えることができます。

  • 表紙:読みたくなるタイトルと第一印象
  • 与件整理:相手の期待や課題を正しく理解していることを示す
  • 目的:課題分析から見えてくる、この企画の目的
  • ターゲット:誰に向けた企画なのか
  • 企画概要:課題解決策をひと言で表すコンセプト
  • 展開案:具体的な実施アイデア、5W1H
  • 予算:予算内で実施できることを示す
  • スケジュール:期限内に実行できることを示す

この順番は、相手に「全部分かっていますよ」「この条件なら実行できますよ」と伝えるための流れです。企画書は、アイデアの発表会ではなく、相手の判断を助けるための設計図だと考えると分かりやすくなります。

採用される企画書のページ構成例を示す図

相手の状況を理解しなければ、正しい企画でも通らない

企画書では、正しいことを書けば必ず通るとは限りません。相手には相手の事情があります。予算が限られている、社内調整に時間がかかる、現場の負担を増やしたくない、短期間で成果を見せたい。こうした状況を無視した企画は、どれだけ内容がよくても動きにくくなります。

たとえば、面倒な手続きが苦手な相手に、複雑な運用を前提にした企画を出しても通りにくいでしょう。堅実な判断を好む相手に、根拠の薄い派手な企画を出しても不安が残ります。誰が審査するのか、誰が実行するのか、どこに不安を感じるのか。そこまで考えることが企画書づくりには必要です。

企画書づくりは、ファシリテーションでもある

企画書づくりは、単なる文章作成ではありません。相手の考えを聞き、目的を確認し、関係者の前提をそろえ、実行に向けた道筋を整理する作業です。

その意味で、企画書づくりはファシリテーションに近い仕事です。まだ言葉になっていない考えを引き出し、バラバラの情報を整理し、関係者が同じ方向を向けるようにする。これは会議の場づくりにも、事業計画づくりにも共通しています。

私が企画書づくりで最初に確認するのは、「この企画でいちばん伝えたいことは何か」です。ここが共有できていないと、後からどれだけ文章やデザインを整えても、企画の芯がずれてしまいます。

企画が通った後に、実行まで考える

もう一つ大切なのは、企画が通った後のことです。企画書が承認されたとしても、それで仕事が終わるわけではありません。むしろ、そこから実行フェーズが始まります。

イベント、販促物、広告、Webサイト、動画、営業資料など、実行手段はさまざまです。しかし、ここで忘れてはいけないのは、それらは目的ではなく手段だということです。

何のために実施するのか。誰に何を伝えるのか。どのような行動につなげたいのか。企画書の段階でここを整理しておくことで、実行フェーズでも判断がぶれにくくなります。

アイズが支援できること

私は、リクルートで求人広告制作に携わった後、制作会社で、商品やサービスの伝え方、販促企画、イベントディレクターなどを行ってきました。文章や企画を通じて、誰かの思いを整理し、別の誰かに伝わる形にする仕事に長く関わってきました。

現在のアイズの支援も、この延長線上にあります。事業計画、補助金申請、マーケティング施策、会議のファシリテーションなど、扱うテーマはさまざまですが、根本にあるのは、考えを整理し、実行できる形にすることです。

通る企画書は、与件の完璧な理解から始まります。相手が何を求めているのかを読み取り、必要な判断材料をそろえ、実行できる形にする。そこから、事業は少しずつ前に進みます。

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