省力化投資補助金(一般型)で重要な5つの数字

省力化投資補助金の申請で重要となる5つの数字を表現したイメージ

申請を考えるなら、第8回公募が始まった今すぐ準備を

第8回公募は2026年8月18日に始まり、公募要領も公開されました。申請受付は9月中旬、公募締切は10月中旬の予定です。公募開始から締切までは約2か月ですが、実際の申請受付期間は約1か月。補助率は原則2分の1,補助上限最大1億円の大型補助金です。

この補助金は、導入したい設備を決めて見積書を取れば申請できるものではありません。現在の作業時間を整理し、設備導入後にどれだけ仕事を減らせるのか、その投資を何年で回収できるのか、生産性や給与をどこまで伸ばすのかを事業計画に落とし込む必要があります。申請を考えている会社は、早めに準備を始めることをおすすめします。

なお、第8回では補助事業実施期間が「交付決定日から17か月以内(採択発表日から19か月以内)」となり、第7回の「18か月以内(採択発表日から20か月以内)」から1か月短くなりました。設備導入やシステム構築に時間がかかる事業では、実施スケジュールにも注意が必要です。

補助金の申請書なのに、なぜこんなに数字が出てくるのか

中小企業省力化投資補助金(一般型)は、人手不足に悩む中小企業が、設備やシステムを導入して仕事を省力化し、生産性を高め、その成果を賃上げにつなげるための補助金です。

ところが、公募要領や申請書を初めて見ると、「労働生産性」「省力化指数」「投資回収期間」など、聞き慣れない言葉と数字が次々に出てきます。補助金に詳しくない方には、ここが最初の難関です。

ただ、全部を難しく考える必要はありません。申請を考えるときに、まず意味を理解しておきたい数字は5つです。この5つを見ると、この補助金が企業に何を求めているのかも見えてきます。

まず5つを一度に整理すると

数字何を見る数字か第8回の基準・見られ方ひとことで言うと
① 労働生産性1人が生み出す付加価値年平均+4.0%以上少ない人数でも価値を生み出せる会社へ
② 1人当たり給与支給総額社員1人当たりの給与年平均+3.5%以上生産性向上の成果を社員へ還元
③ 事業場内最低賃金事業場で最も低い時給地域別最低賃金+30円以上最低水準の賃金も引き上げる
④ 省力化指数仕事をどれだけ減らせるか高いほど審査上評価導入前の仕事をどこまで省けるか
⑤ 投資回収期間投資を何年で回収できるか短いほど審査上評価その設備投資は割に合うか

大きく分けると、①~③は事業計画で守るべき「基本要件」、④と⑤は省力化投資そのものの効果を示す数字です。なお、省力化指数と投資回収期間については、公募要領に「何以上なら採択」という合格ラインは公表されていません。公募要領では、省力化指数は高いこと、投資回収期間は短いこと、そして計算根拠が妥当であることが審査されます。

第8回で特に注意したい変更は、「基準年度」の考え方です。第7回では応募申請時の直近決算期を基準としていましたが、第8回では「補助事業が完了した日を含む事業年度」が基準年度になりました。労働生産性と1人当たり給与支給総額の伸び率は、この基準年度を起点に計画・確認します。

① 労働生産性:社員1人がどれだけ価値を生み出すか

「生産性を上げる」と聞くと、「もっと速く働く」「社員にもっと仕事をさせる」という意味に感じるかもしれません。ここでいう労働生産性は、そういう意味ではありません。

省力化投資補助金での労働生産性は、会社が生み出した付加価値額を、労働者数で割って計算します。

労働生産性 = 付加価値額 ÷ 労働者数

さらに、ここでいう付加価値額は「営業利益+人件費+減価償却費」です。難しく見えますが、簡単に言えば「会社が事業活動によって新しく生み出した価値」を見るための数字です。

第8回公募では、補助事業が完了した日を含む事業年度を「基準年度」とし、事業計画期間中、毎年、基準年度と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)4.0%以上向上させる計画が基本要件です。例えば基準年度の労働生産性が1人500万円なら、1年目は約520万円以上が一つの目安になります。

設備を入れて人を減らすことだけが目的ではありません。空いた時間を、営業、商品開発、顧客対応など、より価値を生む仕事へ振り向けることで、会社全体の付加価値を上げることが重要です。

② 1人当たり給与支給総額:省力化の成果を社員に返せるか

2つ目は、社員1人当たりに支払う給与の水準です。省力化で会社だけが得をするのではなく、生産性向上の成果を賃上げとして社員にも還元することが、この補助金では求められます。

対象になる給与には、給料や賃金、賞与、残業手当、職務手当、住宅手当など、給与所得として課税対象となるものが含まれます。一方、福利厚生費、法定福利費、退職金は含みません。

第8回公募では、基準年度(補助事業が完了した日を含む事業年度)と比較して、事業計画終了時点の1人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させる計画が必要です。事業者自身が3.5%以上の目標値を設定し、交付申請時までに従業員等へ表明したうえで、最終年度にその目標を達成することが求められます。

ここで注意したいのは、「会社全体の給与総額が増えればよい」のではないことです。従業員数が増えれば給与総額は自然に増えます。そのため、1人当たりでどれだけ給与が伸びるかを見ています。

さらに第8回では、設備導入後の賃上げだけでなく「足下の賃上げ」も審査で明確に評価されます。応募申請時の直近決算期から基準年度までの1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が、物価上昇率を上回る程度に達しない計画は、審査上大幅に不利になると明記されています。

③ 事業場内最低賃金:平均ではなく、一番低い時給を見る

3つ目は、事業場内最低賃金です。名前が少し難しいですが、意味は単純です。補助事業を行う工場、店舗、事務所などで働く人のうち、最も低い時間給はいくらか、という数字です。

第8回公募でも、事業計画期間中、毎年、その事業場の最低賃金を、事業を実施する都道府県の地域別最低賃金より30円以上高い水準にすることが基本要件です。

例えば、その地域の最低賃金が1,200円なら、事業場内最低賃金は1,230円以上が必要、という考え方です。平均給与が高くても、一番低い時給の人が基準を下回れば要件を満たしません。

なお、最低賃金引き上げ特例を利用する場合は、この「地域別最低賃金+30円以上」の基本要件は適用されません。特例には別途要件がありますので、利用を検討する場合は第8回公募要領を確認してください。

④ 省力化指数:その仕事を何%なくせるか

ここからの2つは、補助金の要件を満たすだけではなく、申請内容の評価に直接関わる重要な数字です。

省力化指数は、設備を入れることで、対象となる仕事をどれだけ減らせるのかを表します。第8回公募要領でも、次の式で定義されています。

省力化指数
=(設備導入により削減される業務に要していた時間 - 設備導入後に発生する業務に要する時間)
÷ 設備導入により削減される業務に要していた時間

例えば、現在100時間かかっている仕事が、設備導入後に20時間で済むなら、(100-20)÷100=0.8です。つまり、対象業務の80%を省力化できる計算です。

導入前と導入後で行う作業が同じで、100時間の仕事が完全に自動化されて0時間になるなら、省力化指数は1.0になります。したがって、基本的には1に近いほど大きな省力化効果を示します。

ただし、設備を入れた後にも、材料の補充、機械の設定、データ確認、清掃など新たに人が行う作業が発生することがあります。それを無視して「全部自動化できます」と書くのではなく、導入後に本当に必要になる作業時間まで含めて計算することが重要です。

公募要領でも、省力化指数が高いかだけでなく、その記載内容や算出根拠が妥当かどうかを審査すると明記されています。

⑤ 投資回収期間:その設備は何年で元が取れるか

最後が投資回収期間です。これは補助金だけの特別な考え方ではなく、設備投資を判断するときの基本的な考え方です。簡単に言えば、「設備に使ったお金を、その設備が生み出す効果で何年かけて回収できるか」を見ます。

第8回公募要領でも、投資額を、削減できる人件費と増加する付加価値額の合計で割って計算します。

投資回収期間 = 投資額 ÷(削減工数×年間稼働日数×人件費単価 + 増加した付加価値額)

例えば、1,000万円の投資によって、年間250万円分の効果が得られると単純化すれば、投資回収期間は4年です。実際の申請では、公募要領の式に沿って、削減工数や人件費単価、増加する付加価値額を根拠とともに計算します。

審査では、投資回収期間が短い取組であることが評価されます。ただし、「3年以内なら採択」「5年なら不採択」といった公式の合格ラインは公表されていません。無理に数字を短く見せるより、投資額と効果の算出根拠を説明できることが大切です。

省力化投資補助金で重要な5つの数字と、それぞれの意味を整理した図

5つの数字は、実は一本のストーリーになっている

この5つは、ばらばらの数字ではありません。省力化投資補助金が目指している流れを、そのまま数字にしたものです。

設備を導入する

仕事の時間が減る

空いた人と時間を、より価値を生む仕事へ回す

労働生産性が上がる

その成果を賃上げにつなげる

省力化指数だけが高くても、空いた時間を何にも使わなければ、会社全体の付加価値は増えません。反対に、売上を大きく伸ばす計画を書いても、なぜその設備で人手不足が解消されるのか説明できなければ、省力化投資補助金としての説得力が弱くなります。

事務局の事業計画書作成ガイドでも、現在の業務を把握し、どこを省力化し、そこで捻出した人材をどこへ振り向ければ業績向上と賃上げにつながるかを考えることが重要だと示されています。

数字は大きく書けばよいわけではない

補助金申請では、つい「数字は高い方が採択されやすいのでは」と考えたくなります。確かに、省力化指数は高い方が、投資回収期間は短い方が審査上評価されます。

しかし、審査されるのは数字そのものだけではありません。なぜその作業時間が減るのか、なぜ売上や付加価値が増えるのか、なぜ賃上げできるのか。公募要領では、各数字の算出根拠が妥当であることも明確に評価項目になっています。

実現できない数字を置くよりも、現場の作業時間、設備メーカーの仕様、見積書、現在の人員配置、過去の売上などから積み上げた数字の方が、事業計画として説得力があります。

補助金を知らない方ほど、まず5つの意味から確認を

省力化投資補助金(一般型)は、単に「機械を買えば半分補助してもらえる」という制度ではありません。設備投資によって本当に人手不足を解消し、生産性を高め、その成果を賃上げにつなげられるかを確認する制度です。

その考え方を理解する一番早い方法が、今回紹介した5つの数字を見ることです。申請を検討するときは、いきなり申請書を書き始めるのではなく、まずこの5つについて、「自社では今いくらか」「設備導入後にどう変わるか」を整理してみてください。

なお、第8回でも歯科医業を営む医療法人は対象です

これまで医療法人は原則として補助対象外でしたが、第7回公募から申請できるようになり、第8回でも引き続き申請対象です。医療法第44条に基づき都道府県知事の認可を受けて設立され、従業員数300人以下であることが要件です。医療法人全般が対象になったわけではなく、歯科医業以外の医療法人は対象外です。歯科医業を営む医療法人が申請する場合は、診療所開設許可書と診療所開設届の提出が求められます。

株式会社アイズは認定経営革新等支援機関です

株式会社アイズは、中小企業庁の認定を受けた「認定経営革新等支援機関」です。省力化投資補助金をはじめとした補助金の申請支援では、申請書を埋めることだけを目的にせず、設備投資が実際に会社の生産性向上や賃上げにつながるかという事業計画そのものを一緒に考えています。

「自社の設備投資が対象になるのか分からない」「5つの数字をどう計算すればよいか分からない」という段階でも構いません。まず現状の業務と導入したい設備を整理するところから始めることができます。

参考資料

◆ご相談ください

省力化投資補助金(一般型)を検討しているが、どの設備が対象になるのか、省力化指数や投資回収期間をどう計算するのか、事業計画をどう組み立てればよいか迷っている方は、お気軽にご相談ください。

株式会社アイズでは、認定経営革新等支援機関として、設備導入そのものだけでなく、省力化によって生まれた時間をどう売上・付加価値・賃上げへつなげるかまで一緒に整理します。

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補助金の活用や事業計画づくりについては、株式会社アイズの事業内容ページでもご案内しています。

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