加点は、採択のための裏技ではない
補助金の公募要領を見ると、審査項目とは別に「加点項目」が並んでいます。
申請実務では、「取れる加点はできるだけ取った方がよい」「加点が少ないと不利になる」と考えるのは当然です。実際、同じような評価の事業計画が並んだ時、加点の有無が結果に影響することはあります。
ただし、加点を単なる採択テクニックとして見ると、その意味を見失います。
なぜ、健康経営、事業継続、賃上げ、女性活躍、DX、事業承継などが評価されるのでしょうか。
私は、加点項目を「国が中小企業に求めていること」と読むと、制度の考え方が分かりやすくなると思っています。
加点項目には、政策の優先順位が表れる
補助金は、申請した会社だけを儲けさせるための制度ではありません。中小企業が投資を行い、売上や付加価値を増やし、雇用や賃上げにつなげることで、日本経済全体を前に進めるための政策です。
そのため国は、補助対象となる事業計画の内容だけでなく、会社そのものがどのような経営を行っているかも見ています。
災害に備えているか。社員が働き続けられる職場をつくっているか。取引先と適正な関係を築いているか。デジタル化に取り組んでいるか。次の世代へ事業をつなごうとしているか。
加点項目は、こうした政策上の優先順位を具体的な形にしたものです。
現在の主な補助金に見る加点項目
加点項目は、補助金の種類や公募回によって異なります。ここでは、2026年7月時点の主要補助金を例に、代表的な項目とその意味を見ていきます。
■新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
2026年に始まった「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」では、革新的な製品・サービスの開発、新市場への進出、海外市場開拓などが支援対象です。
第1回公募では、パートナーシップ構築宣言、くるみん、えるぼし、健康経営優良法人、経営革新計画、事業継続力強化計画、DX認定、J-Startup、研究開発費の計上、地域別最低賃金の引上げなど、多様な加点が設けられています。
ここから見えるのは、単に新しい設備を入れる会社ではなく、取引先との共存、人材活躍、健康経営、災害への備え、デジタル化、研究開発、賃上げまで含めて、会社全体を成長させる企業を評価しようとする姿勢です。
■事業承継・M&A補助金
事業承継・M&A補助金は、後継者への承継、M&Aによる経営資源の引継ぎ、承継後の統合や新たな投資などを支援する制度です。
この補助金では申請枠ごとに加点項目が異なりますが、賃上げ、事業継続力の強化、経営革新、地域経済への貢献、適切なM&A・PMIへの取組などが評価されます。
国が求めているのは、単に会社の名義を次の経営者へ変えることではありません。雇用、技術、顧客、取引先、地域との関係を引き継ぎ、承継後も会社を成長させることです。加点は、「会社を残すこと」と「承継後に強くすること」の両方を求めていると読めます。
■中小企業省力化投資補助金(一般型)
省力化投資補助金では、人手不足に対応する設備やシステムを導入し、生産性向上と賃上げにつなげる計画が求められます。
第7回公募では、事業承継・M&A、事業継続力強化計画、成長加速マッチングサービス、地域別最低賃金や事業場内最低賃金の引上げ、えるぼし、くるみん、省力化ナビ、健康経営優良法人、生産性向上支援センターの利用などが加点項目になっています。
一見するとばらばらに見えますが、共通しているのは、人手不足を設備導入だけで解決しようとしないことです。人を大切にし、働きやすい環境を整え、生産性を上げ、その成果を賃上げへつなげる会社を増やそうとしています。

加点項目から見える、国が求める会社像
主要補助金の加点項目を並べると、国が中小企業に期待している方向性が見えてきます。
・取引先と適正な関係をつくる会社
・災害や感染症が起きても事業を続けられる会社
・社員の健康、子育て、女性活躍を大切にする会社
・デジタル技術を活用し、生産性を高める会社
・研究開発や新市場への挑戦を続ける会社
・利益を賃上げとして社員へ還元する会社
・技術、雇用、顧客を次の世代へつなぐ会社
要するに評価されているのは、補助金を上手に申請する会社ではありません。社会の変化に対応しながら、長く成長できる会社です。
加点を取ることと、経営をよくすることを分けない
取れる加点は、できるだけ取得する。この考え方自体は間違っていません。
ただし、申請締切に間に合わせるためだけに形式を整え、認定や宣言を取得して終わってしまうと、会社には何も残りません。
例えば、事業継続力強化計画を作るなら、災害時の連絡方法や代替拠点、データのバックアップまで実際に見直す。健康経営優良法人を目指すなら、社員の健康状態や働き方を継続的に改善する。パートナーシップ構築宣言を行うなら、取引条件や価格転嫁への対応を見直す。
加点の取得と経営改善を別の作業にしないことが大切です。
取りやすい加点だけを追いかける危険
加点には、比較的短期間で準備できるものもあれば、認定時期が限られるもの、実績や継続的な取組が必要なものもあります。
また、賃上げに関する加点や特例は、未達成時に減点や返還などのリスクが生じる場合があります。採択されやすくするために、達成できない目標を置くのは本末転倒です。
「加点が取れるか」だけでなく、「自社が本当に取り組むべき内容か」「取得後も続けられるか」を確認する必要があります。
加点項目は、中小企業政策を読むための資料
公募要領の加点欄は、申請直前だけ読むものではありません。
複数の補助金の加点項目を見比べると、中小企業政策がどちらへ向かっているかが分かります。
人手不足、生産性向上、賃上げ、事業承継、健康経営、女性活躍、防災、DX。これらは一時的な流行ではなく、今後の中小企業経営で避けて通れない課題です。
補助金を使う予定がなくても、加点項目を自社の経営チェックリストとして見る価値はあります。
補助金は、国の方向性と自社の経営を重ねる制度
補助金申請では、制度に自社を無理に合わせるのではなく、自社が進めたい投資と国の政策目的がどこで重なるかを考えることが重要です。
その接点が事業計画であり、加点項目はその周辺にある経営姿勢を確認するものです。
加点を集めることだけに目を向けるのではなく、「なぜこの項目が評価されるのか」を考える。そうすれば、補助金の公募要領は、採択の説明書だけでなく、これからの経営を考える材料になります。
<参考資料>
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回公募要領(2026年7月17日更新)
- 事業承継・M&A補助金 15次公募 各枠公募要領
- 中小企業省力化投資補助事業(一般型)第7回公募要領
- 中小企業庁・中小企業基盤整備機構 各補助金公式サイト
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補助金を検討しているが、どの加点を準備すべきか、自社に無理のない計画をどう立てればよいか迷っている方は、お気軽にご相談ください。
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補助金の活用や事業計画づくりについては、株式会社アイズの事業内容ページでもご案内しています。
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