補助金は、公募要領だけを見ていても先が読めない
私は補助金の今後を考えるとき、毎年「骨太の方針」を見るようにしています。正式には「経済財政運営と改革の基本方針」。その年の政府が、どこにお金を使い、どんな経済や社会をつくろうとしているのかを示す大きな設計図です。今年は7月21日に閣議決定されました。
もちろん、骨太の方針を読めば「来年の○○補助金は補助率2分の1になる」といった細かい制度まで分かるわけではありません。個別の補助金は、その後の予算編成、制度設計、事務局の公募要領を経て具体化されます。
それでも私が先に骨太の方針を見るのは、補助金の「細かいルール」ではなく、「国がどちらへ進もうとしているのか」が先に分かるからです。補助金は国の政策を実現するための手段です。国が重点を変えれば、補助金の対象、審査項目、加点、賃上げ要件なども少しずつ変わっていきます。
2026年の骨太の方針は「成長する分野に重点投資」が鮮明
2026年の骨太の方針では、長年の「未来への投資不足」が日本の潜在成長率を低迷させてきたという問題意識が強く打ち出されました。そのうえで、政府が一歩前に出て「危機管理投資」と「成長投資」を大胆かつ戦略的に進めるとしています。
さらに、AI・半導体、デジタル・サイバーセキュリティ、創薬・先端医療、資源・エネルギー安全保障・GX、防災・国土強靱化、コンテンツなど17の戦略分野を設定し、2040年度までの官民投資を大きく引き上げる方向を示しています。
中小企業向けの補助金も、この大きな流れと無関係ではありません。今後は、単に自社がやりたい事業のための設備投資よりも、人手不足の解消、生産性向上、AI・DX、成長分野への投資、地域経済への波及など、国が進めたい方向と結びついた事業がより重視される=採択されやすいと考えるのが自然です。
賃上げは「計画」だけでなく、足下の実績まで見られる
もう一つ、2026年の方針で特に強いのが賃上げです。骨太の方針では、賃上げを単なる分配ではなく、人材を確保し、消費を拡大し、生産性向上投資につなげる「供給力強化」そのものと位置付けています。
さらに関連資料では、補助金について「足下の賃上げ状況も審査・評価する仕組みへ見直す」と明記されています。つまり、「補助金をもらったら将来賃上げします」という約束だけでなく、これまで実際に賃上げへ取り組んできたかも重視する方向です。
実際、省力化投資補助金(一般型)の第8回公募では、応募申請時の直近決算期から基準年度までの1人当たり給与支給総額の上昇について、物価上昇率を上回る程度に達しない計画は審査上大幅に不利になるという考え方が入りました。骨太の方針に示された方向が、その年度の公募要領にも一部先行して表れた例と見ることができます。
「たくさん配る」より、効果が出る施策に予算を寄せる
2026年の方針では、必要な投資を増やす一方で、「歳出の質を高める」ことも強調されています。各施策について、投資の実行状況、民間投資をどれだけ呼び込んだか、KPIを達成したかなどを点検し、政策効果を検証する方針です。
EBPM(データや根拠に基づいて政策をつくる考え方)も、単なる事後評価ではなく、翌年度以降の予算へ反映するために使うとされています。
ここから言えるのは、これは推定ですが、採択件数だけ多くても、生産性や付加価値、民間投資などの効果が十分に確認できない支援策は、今後縮小・統合・見直しの対象になりやすいということです。反対に、政策効果が数字で確認できる分野には、より重点的に予算が配分される可能性があります。

医療法人への対象拡大も、今後を見る一つの材料になる
2026年の成長戦略では「創薬・先端医療」が17の戦略分野の一つに入り、医療・介護分野でもDX・AXによる生産性向上、施設・設備の計画的な整備への支援が示されています。医療DXや先端医療は、今後も政策的な重点分野です。
一方、補助金の対象者という点では、これまで医療法人が使えない中小企業向け補助金も少なくありませんでした。しかし、省力化投資補助金(一般型)では第7回から「歯科医業を営む医療法人」が対象となり、第8回でも継続しています。
ここから先は私の見立てです。骨太の方針に「医療法人を中小企業向け補助金の対象に広げる」と書かれているわけではありません。したがって、医療法人全般へ対象が広がると断定はできません。
ただ、医療・先端医療・医療DXが成長分野として位置付けられ、実際に歯科医療法人へ対象が広がった制度が出てきたことは、今後の制度設計を読むうえで一つの材料になります。特に設備投資や生産性向上との親和性が高い補助金では、対象者の見直しが起きる可能性を見ておく価値はあると思います。
本格的な変化は2027年度。ただし、今年から一部は動く
骨太の方針2026では、2027年度を「責任ある積極財政元年」と位置付け、新しい予算編成を本格化させるとしています。「強く豊かな日本」投資枠を設け、複数年度で予見可能な投資支援を行い、恒常的な施策は補正予算ではなく当初予算で措置する方向も示されています。
したがって、大きな制度改定は2027年度予算から本格化すると考えるのが基本です。
ただし、「来年度まで何も変わらない」という意味ではありません。2026年度中の追加公募、補正予算、次回公募の審査項目などに、成長投資・賃上げ・政策効果重視の考え方が先行して入ることがあります。実際に省力化投資補助金第8回で「足下の賃上げ」が強く意識されたことは、その一例です。
同じ補助金でも、公募回ごとに「微妙に違う」
補助金の申請で怖いのは、「前回と同じだろう」と思い込むことです。制度名、補助率、基本要件が同じでも、公募要領を読むと細かな定義や審査の見方が変わっていることがあります。
例えば、省力化投資補助金(一般型)の第8回では、労働生産性や給与の基準年度の考え方が変わり、足下の賃上げに関する審査上の扱いも加わりました。補助事業実施期間も第7回から短くなっています。
こうした変更は、一見すると小さくても、事業計画の数値やスケジュールに直接影響します。だから私は、前年の資料や解説記事だけで申請せず、毎回必ず最新の公募要領を確認します。
骨太の方針は、事業の方向を考える材料
骨太の方針を読む目的は、国が使いそうな言葉を申請書に散りばめることではありません。
自社がこれから取り組もうとしている事業が、人手不足の解消、生産性向上、賃上げ、成長投資、地域への波及といった国の方向とどこで重なるのかを考えるためです。
補助金に合わせて事業をつくるのではなく、会社としてやるべき投資があり、その投資が国の政策方向とも重なるときに補助金を使う。この順番が大切です。
その意味で、骨太の方針は「次にどんな補助金が出るかを当てる資料」ではなく、中小企業が少し先の事業計画を考えるための材料だと私は考えています。
株式会社アイズは認定経営革新等支援機関です
株式会社アイズは、中小企業庁の認定を受けた「認定経営革新等支援機関」です。補助金の申請だけを見るのではなく、国の政策の方向、会社の強み、投資効果、将来の売上・付加価値・賃上げまで含めて事業計画を整理することを重視しています。
「今使える補助金は何か」だけでなく、「来年以降に向けて、どんな投資を準備しておくべきか」という段階でもご相談いただけます。
参考資料
- 経済財政運営と改革の基本方針2026(令和8年7月21日閣議決定)
- 経済財政運営と改革の基本方針2026 政策ファイル(内閣府、2026年7月)
- 経済財政運営と改革の基本方針2026 概要(内閣府、2026年7月21日)
- 中小企業省力化投資補助事業(一般型)第8回公募要領(2026年8月)
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補助金を使った設備投資や新しい事業を検討しているが、制度に合わせるだけでなく、今後の政策動向も踏まえて事業計画を考えたい方は、お気軽にご相談ください。
株式会社アイズでは、認定経営革新等支援機関として、補助金申請だけでなく、事業の方向性、投資効果、売上・付加価値・賃上げまで含めた計画づくりを支援しています。
初回のご相談は無料です。
補助金活用や事業計画づくりについては、株式会社アイズの事業内容ページでもご案内しています。

