変えられないことに振り回されない

変えられない障害物を避け、自分が進める道を選ぶイメージ

悩みには、自分では変えられないものがある

学生なら、景気や採用市場、企業側の採用基準、学歴やこれまでの経験。社会人なら、年齢、会社の制度、上司や取引先の判断、業界全体の変化。キャリアを考えるときには、自分の努力だけではすぐに変えられない条件がたくさんあります。

ところが、私たちは変えにくいものほど気にしてしまいます。『景気が悪いから』『もうこの年齢だから』『あの人が評価してくれないから』と考え続けても、それだけでは次の行動にはつながりません。

私はキャリアデザインを考えるとき、まず『変えにくいもの』と『自分で変えられるもの』を分けることが大切だと考えています。

現実を受け入れることは、諦めることではない

変えにくい条件を受け入れるというと、『では諦めるしかないのか』と思うかもしれません。しかし、私が言いたいのは逆です。

変えられないものを変えようとして力を使い続けるのではなく、その条件の中で、自分が変えられることへ力を移す。そのために現実を認識します。

企業の採用基準そのものは変えられなくても、応募先は変えられます。今の能力を一晩で変えることはできなくても、学び方や経験の積み方は変えられます。他人の評価を直接コントロールすることはできなくても、自分の伝え方や行動量は変えられます。

「変えられること」は意外に多い

キャリアというと、学生の就職活動だけを思い浮かべる人もいますが、本来は、社会人になってからもずっと続くものです。

就職、転職、異動、昇進、学び直し、副業、独立、働き方の見直し。人生の節目ごとに『これからどう働くか』を考えることが、キャリアデザインです。

そのとき、自分で変えられるのは、学ぶ内容、経験の積み方、応募先、働く場所、人との関わり方、伝え方、行動量、時間の使い方などです。

すべてを自由に選べるわけではありません。しかし、変えられない条件だけを見ていると、変えられる選択肢まで見えなくなってしまいます。

目標は「魅力」だけで決めない

キャリアデザインでは、目標設定も大切です。『やりたいことを見つけよう』『夢を持とう』と言われることがありますが、私は魅力だけで目標を決めるのは危険だと思っています。

どれほど魅力的でも、現実的にほとんど到達できない目標なら、長い時間を使った末に行き詰まる可能性があります。反対に、実現しやすいだけで、本人にとって何の魅力もない目標でも長続きしません。

目標設定の公式

私は、目標を次のように考えています。

目標 = 魅力 × 実現可能性

「魅力」は、その目標を本当に実現したいと思えるか、ワクワクするか、自分にとって意味ややりがいがあるか、ということです。

そして「実現可能性」は、単に『できそうか、できなさそうか』という感覚だけではありません。今の自分の能力や経験、これから必要になる学習や経験、そして達成までにどれくらい時間がかかるかまで含めて考えます。

実現可能性には「現在地」と「時間」を入れる

同じ目標でも、人によって実現可能性は違います。今持っている知識やスキル、経験、人脈、生活環境など、現在地が違うからです。

さらに重要なのが時間です。知識や経験を積めば実現できるとしても、それに10年かかるなら、本当に10年かけてでも実現したい目標なのかを考える必要があります。

これは『時間がかかるからやめよう』という意味ではありません。10年かかってもやりたいことなら、それは非常に強い目標です。一方で、そこまでの魅力がないなら、目標を修正したり、別のルートを探したりしてよいと思います。

キャリアで変えにくい条件と変えられる行動、目標設定の公式を整理した図

学生なら、就職先選びにも使えます

例えば学生がいわゆる『有名企業に入りたい』と考えたとします。まず、その会社に入ること自体が本当に魅力なのか。仕事内容、働き方、成長機会などを含めて考える必要があります。

次に実現可能性です。今の能力や経験、採用条件との差はどれくらいか。必要な準備に半年なのか、2年なのか。その時間を使う価値があるのか。

ここまで考えれば、『有名だから』ではなく、自分にとって意味のある目標かどうかを判断しやすくなります。

社会人なら、転職や学び直しにも使えます

社会人のキャリアでも同じです。転職したい、新しい分野へ移りたい、資格を取りたい、独立したい。魅力だけで走り出す前に、実現可能性を考えます。

今の経験のどこが使えるのか。何が足りないのか。その不足を補うのにどれくらい時間が必要なのか。家族や収入など、今の生活との両立は可能なのか。

現実を見ることは夢を小さくすることではありません。むしろ、夢を本当に実現するためのルートを具体的にする作業です。

年齢や過去も変えられない。しかし経験は使えます

社会人になると、とくに年齢やこれまでのキャリアを気にする場面が増えます。年齢そのものや過去の経歴は変えられません。

しかし、その経験をどう使うかは変えられます。長く現場にいたこと、失敗したこと、違う業界を経験したこと。見方を変えれば、それらが自分にしかない強みになることがあります。

私自身も長く現場に立ち続けています。企画、営業、補助金支援、大学での講義など、実際に手を動かしてきた経験は、今の自分の仕事の大きな土台になっています。

キャリアは、一度決めて終わりではありません

目標=魅力×実現可能性という式は、一度決めた目標を守り続けるためのものではありません。

能力が上がれば実現可能性は高くなります。環境が変われば下がることもあります。年齢や経験によって、魅力そのものが変わることもあります。

だから、学生でも社会人でも、ときどき目標を見直してよい。今の自分にとって魅力があり、今の自分から現実的に近づける目標を選び直す。それもキャリアデザインの大切な作業です。

変えられないものより、次に変えられるものを見る

キャリアを考えていると、不安になることはたくさんあります。しかし、変えられない条件に意識を奪われ続けても、未来は変わりません。

まず現実を確認する。そのうえで、自分が変えられることを探す。そして目標を『魅力×実現可能性』で考える。

学生にも社会人にも、この二つを習慣にしてほしいと思っています。キャリアデザインとは、理想だけを描くことでも、現実に合わせて諦めることでもありません。今の自分から、より良い方向へ進む道を考え続けることです。

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