あなたは今、どのステージ?~学習の4段階

学習の4段階を抽象的に表したイラスト

NLPから知った「学習の4段階」

皆さんは、NLPという言葉をご存じでしょうか。

NLPは「神経言語プログラミング((Neuro Linguistic Programming))」と訳される考え方で、コミュニケーションや学習、思考のパターンなどを扱う分野です。NLPというと、最近は「自然言語処理(Natural Language Processing)」がよく取り上げられますが、これは、人間が日常的に話す言葉(自然言語)をコンピュータに理解・解析させ、処理する技術で、AIや機械学習の発展により、検索エンジンの予測変換や、翻訳ツール、AIチャットボットなどに広く実用化されていますが、これとは違います。

私はNLPを本格的に学んだわけではありませんが、その考え方の中で紹介されている「学習の4段階」というものを知り、これは人が成長していく順番を考えるうえで、とても分かりやすい視点だと感じました。

大学でキャリアデザインを教える時も、仕事で人や組織の成長を考える時も、この4段階を知っておくと、「なぜ今うまくいかないのか」「次に何をすればよいのか」が整理しやすくなります。

学習の4段階とは

学習の4段階とは、人が新しいことを身につけていく時の状態を、4つの段階に分けて考えるものです。

1つ目は、「無意識的無能」です。これは、何をしてよいのか分かっていない状態です。できない以前に、そもそも何が分からないのかも分かっていません。

2つ目は、「意識的無能」です。何をすればよいかは分かっているけれど、まだ技術や経験が足りないのでできない状態です。

3つ目は、「意識的有能」です。分かっていて、技術もあるので、意識すればできる状態です。ただし、まだ集中して考えながらでないとできません。

4つ目は、「無意識的有能」です。意識しなくても、自然にできる状態です。長く続けてきた仕事や、体に染みついた技術は、この段階に近づいていきます。

最初の壁は、「できない」ではなく「分からない」

この4段階で大切なのは、最初にある「無意識的無能」という段階です。

人は何かができない時、すぐに「努力が足りない」「やる気がない」と見られがちです。しかし実際には、本人がまだ何をすればよいのか分かっていないだけ、ということがあります。

たとえば学生のキャリア支援でも、勉強や就職活動に熱心になれない学生がいます。その時に、いきなり「もっと頑張りなさい」と言っても、あまり効果はありません。

なぜなら、本人がまだ「何に向かえばよいのか」「何をすればよいのか」を見つけられていないことがあるからです。向かう方向が見えていないのに、熱心になれと言われても難しい。これは、ある意味では当然のことです。

教える側は、相手がどの段階にいるかを見る

人に何かを教える時、教える側はすでに「意識的有能」か「無意識的有能」の段階にいます。つまり、自分では分かっているし、できる状態です。

だからこそ、つい「なぜこんなことが分からないのか」と思ってしまいます。

しかし、相手はまだ「無意識的無能」かもしれません。あるいは、何をすればよいかは分かっていても、まだ技術が足りない「意識的無能」かもしれません。

この段階を見誤ると、教える側の言葉は相手に届きません。相手が①の段階にいるのに、③の人向けの説明をしても、理解されないのです。

から②へ進めることにも価値がある

学習支援や人材育成では、すぐに「できるようにする」ことだけが成果だと思われがちです。

しかし、実際には①から②へ進めることにも、大きな価値があります。

つまり、「何をしてよいか分からない」状態から、「何をすればよいかは分かった。でも、まだできない」という状態に進むことです。

一見すると、まだできていないので成果がないように見えます。しかし、本人にとっては大きな前進です。何ができていないのかが分かれば、次に練習することが見えてきます。

見えるところにハードルを置く

私は教育研修の中で、①の「何をしてよいか分からない」状態から、②の「分かっているが、まだできない」状態へ進むためには、「見えるところにハードルを置く」ことが大切だと伝えています。

ハードルが遠すぎたり高すぎたりすると、人は最初からあきらめてしまいます。逆に低すぎると、越えたとしても成長にはつながりにくい。

大切なのは、「なんとか頑張れば越えられる高さ」に設定することです。目指す方向が見えていて、少し背伸びをすれば届きそうだと思える。そういうハードルがあると、人は越え方を考え始めます。

これは、学生に限った話ではありません。社員教育でも、仕事の進め方を教える時でも同じです。まず、相手が見えるところにハードルを置く。そして、越え方を一緒に考える。そこから、学習は動き始めます。

見えるところにハードルを置き、少し頑張れば越えられる目標を設定することを示した図

できる人ほど、できない時代を忘れやすい

人は、できるようになると、できなかった頃の感覚を忘れます。

自転車に乗れる人は、乗れない人がなぜ倒れるのかをうまく説明できないことがあります。パソコンが得意な人は、苦手な人がどこでつまずいているのかを想像しにくいことがあります。

仕事でも同じです。経験を積んだ人にとっては当たり前のことでも、初めて取り組む人にとっては、どこから手をつければよいか分からないことがあります。

だからこそ、教える側、支援する側には、相手が今どの段階にいるのかを見る姿勢が必要です。

成長には順番がある

学習の4段階は、人を評価するためのものではありません。

むしろ、人が成長していく順番を理解するためのものです。

今できないことがあっても、それは能力がないということではありません。まだ何をすればよいか分かっていない段階かもしれない。分かってはいるけれど、練習が足りない段階かもしれない。

そう考えると、自分自身の学び方も、人への教え方も少し変わってきます。

いきなり④を求めない。まず①から②へ、②から③へ、そして③を繰り返すことで④に近づいていく。

仕事でも、教育でも、キャリア支援でも、この順番を知っておくことはとても大切だと思っています。

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