STPはもう古い? デジタル時代にも使える顧客の考え方

3つのレンズやフィルターを通して、多様な人の中から『選ばれる理由』が浮かび上がる抽象的な構図。古典的なマーケティング図解に見せず、データやAIを思わせる現代的な背景。文字は少なめ。少しユーモアが感じられる。 1448×1086px。 STPをデジタル時代の顧客理解として表現したイメージ

STPは、昔のマーケティング理論なのか

マーケティングを勉強すると、かなり早い段階で出てくるのが「STP」です。Sはセグメンテーション、Tはターゲティング、Pはポジショニング。市場を分け、狙う相手を決め、その相手に対して自社がどんな位置を取るかを考える方法です。

古くから使われている考え方なので、「デジタル時代にはもう古い」「AIが顧客を見つけてくれるのだからターゲティングは不要」という意見もあります。これは半分正しく、半分は誤解だと私は考えています。

広告を『誰に配信するか』という技術は、確かに大きく変わりました。しかし、『誰がどんなことに困っているのか』『自社は何で選ばれるのか』まで考えなくてよくなったわけではありません。むしろ、ここを曖昧にしたままAIに任せても、何を売りたい会社なのかがぼやけます。

STPを難しく考えず、3つの質問にする

STPは、専門用語を外すと次の3つの質問です。

  • S:お客様には、どんな違いがあるのか?
  • T:その中で、まず誰を優先して考えるのか?
  • P:その人から見て、自社は何で選ばれるのか?

この3つを順番に考えるだけでも、商品づくりや営業の迷いはかなり減ります。

S:セグメンテーション:市場を「分ける」のではなく、違いを見る

セグメンテーションは、市場を年齢や性別で細かく切る作業だと思われがちです。しかし大切なのは、分類そのものではありません。お客様によって、困りごと、選ぶ基準、買うタイミング、使い方が違うことに気づくための作業です。

例えば同じ業務システムでも、『人手不足を解消したい会社』『ミスを減らしたい会社』『残業を減らしたい会社』では、欲しい価値が違います。中小企業では、最初から大規模な市場調査をする必要はありません。既存顧客へのヒアリングや営業現場の声だけでも、違いは見えてきます。

T:ターゲティング:「この人だけに売る」と決めることではない

従来の説明では、分けた市場の中から『狙う市場を選ぶ』のがターゲティングです。人もお金も限られる中小企業が、全員に同じ力をかけることはできないからです。

ただし、デジタル広告では事情が変わっています。Google広告などでは、AIが検索意図や行動など多くの情報を使い、広告主が細かく指定しなかった相手まで含めて、成果が見込める人を広く探す仕組みが強くなっています。

この意味では、『広告配信先を人間が細かく決めるターゲティング』は以前ほど重要ではありません。

しかし、これは『誰に価値を届けたいかを考えなくてよい』という意味ではありません。AIに配信を任せる場合でも、商品、価格、広告表現、ホームページで何を伝えるかを決めるためには、顧客像が必要です。

P:ポジショニング:何で選ばれる会社になるのか

STPの中で、デジタル時代になっても特に重要なのがポジショニングです。

品質がよい、対応が丁寧、実績がある。これだけでは、多くの会社が同じことを言います。お客様から見たときに『この会社は何が違うのか』『どんな時に選ぶ会社なのか』が分かることが必要です。

ポジショニングは、会社が勝手に名乗る肩書きではありません。お客様の頭の中で、競合と比べてどんな位置に置かれるか、という話です。だからこそ、自社の強みだけを見るのではなく、顧客と競合の両方を見る必要があります。

STPの3段階とデジタル時代の使い方を整理した図

デジタル時代は「狭く決めて、その人だけに届ける」から変わった

昔のSTPは、ある意味では一直線でした。市場を分け、狙う相手を決め、その相手に広告を届ける。マスメディア中心の時代には、この考え方が分かりやすかったのです。

今は、検索、SNS、EC、動画など、顧客の行動が細かくデータとして残り、AIが一人ひとりの反応を見ながら配信を変えるようになりました。そのため、最初から人間が対象を狭く決めすぎると、かえって可能性を狭める場合があります。

ここは、古典的なSTPをそのまま使わない方がよいところです。『誰に売るかを決める』より、『誰にどんな価値があるかを仮説として持ち、実際の反応を見ながら修正する』と考えた方が、今の時代には合っています。

中小企業でのSTPは、まず「誰の、何の困りごとか」から

中小企業がSTPを使うとき、きれいな市場分類表を作ることが目的ではありません。

誰の、どんな困りごとに、私たちは何で役に立てるのか。

まず、この一文を具体的にすることです。

そして営業してみる。ホームページで伝えてみる。反応が違えば、顧客像や伝え方を変える。デジタル時代のSTPは、一度決めて終わるものではなく、実際のデータや顧客の声を見ながら動かしていくものだと思います。

STPは不要ではない。使い方を変えればよい

STPは古典的な理論です。しかし、古いことと、使えないことは別です。

Sで顧客の違いを知る。Tでまず誰を優先して考えるかを決める。Pで何を理由に選んでもらうかを明確にする。この基本は、今でも十分に使えます。

変わったのは、ターゲットを固定して、その人だけに情報を届けるという部分です。デジタルとAIによって、実際に反応する人を見つける力は格段に高まりました。だからこそ、人間は『誰にどんな価値を提供するのか』『何で選ばれるのか』を考えることに集中する。そのようにSTPを使えば、今でも非常に実用的な道具です。

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