なぜうまくプロジェクトが運営できないのか?
これまで、プロジェクトがうまく進行していくためには、参加者全員で目的意識とゴールを共有化させ、さらにその目的に向かっていくことのモチベーションを維持することが重要だとお話ししてきました。言うのは簡単ですが、では、なぜそれができないのでしょう。実はそこには「集団思考の落とし穴」があるのです。現在、プロジェクトを任されている方で、「どうもうまく進まない」と進捗管理に悩んでいらっしゃる方は、プロジェクトが失敗に終わってしまう前に、この落とし穴にはまっていないか、一度チェックしてみることをお勧めします。
落し穴①~社会的手抜き
「私一人ぐらい参加しなくてもいいだろう」という現象。参加メンバーが5人程度以上になってくると発生する。
【改善策】
会議のルールとして、全員が発言することを義務化したり(「グランドルール」など会議をスムーズに行うための各種ファシリテーションツールがありますが、それはこれからご紹介していきます)、そもそもその会議に不必要な方まで参加させていないかをチェックする。
落とし穴②~感情的対立
プロジェクトを成功させるための建設的な「意見のための対立」ではなく、単に「あいつは嫌い、ウマがあわない」といった感情に根差した対立が生じている。
【改善策】
まずは明確なロジックに基づいて会議を進行させる必要があります。そのためには「ロジックツリー」など、会議冒頭に問題点を論理的に整理してあげるとよい。
落とし穴③~声高少数者の影響
「声の大きな」「目立つ」意見に会議の主導権を奪われ、「声の小さな」「目立たない」正しい意見を見落としてしまう。
【改善策】
これも上記の①②の改善策が役立ちます。発言する機会を平等に与えるルールを設定し、会議を運営していきます。
落とし穴④~集団圧力同調行動
会議に対して、目に見えない集団的な圧力が生じており、知らず知らずのうちにその圧力に同調しまっている。例えば、日本では「和をもって尊し」という意識が行動を規定してしまい、斬新なアイデアを抑圧してしまっている。
【改善策】
こういう状況に陥っているようなら、まずは各自の発言をすべて肯定しながらアイデアを出していく「ブレーンストーミング」などが有効
落とし穴⑤~集団愚行
一流の学校を卒業した優秀な人材がプロジェクトメンバーになっているのにもかかわらず、なぜか「今イチ」な答えに帰結してしまう現象。他人より自分の方が優れているということを示したいために「極端な意見の競争」になったり、逆に上司のことが気になり「万人受けする意見」が採用される。
【改善策】
出てきた意見の優劣を感覚で判定したり、上司の好みそうなアイデアに持っていくことを防ぐには、「プロコン分析」といった、アイデアの良しあしを事実ベースに落として客観的に優劣をつける。
いかがでしょうか。①~⑤、タイプは違いますが、共通することは、自由な意見が出せず、発言力のある人に流されてしまい、プロジェクトを成功に導けないということです。次回からは、今回のコラムで上げた具体的なファシリテーションツールやコツ・ノウハウをご紹介していこうと思います。
参考:「ファシリテーターの道具箱」ダイヤモンド社